魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-16 ☸ リリスの初めて
魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-16 ☸ リリスの初めて
魔法外科医の少年は癒し系~あらすじ
魔法外科医って結構、大変なお仕事。さらに転生者の受け入れまで。ほのぼのあり、シリアスあり、アクションあり、ギャグあり、ほどよくエッチもありの逆異世界転生ファンタジー。
<ロビ様、血管とかひとつずつ繋げていますけど、ぶわぁって治る治癒魔法というのは無いのですか?>
<あるよ。あるけど、あれ、障害が残るんだ>
<どういうことでしょうか?>
<切れた患部がぴったり合っていれば綺麗に治るんだけど、ずれているとそのまま治っちゃってリハビリが大変なんだ。特に太い血管や筋肉はちゃんとやらないと>
<なるほど、勝手に元通りになるわけじゃないんですね>
<そう。だから、障害を残さないよう、元通りに結合していくんだ>
(ハルカの世界では、魔法って、随分と便利なものと解釈されているんだな)
※本小説は、「小説になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」、「ノベルバ」、「ノベルビア」にも投稿しておりますので、お好みのサイトで読んでいただければ幸いです。
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魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-15 ☸ リリスの理論
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(ああ、やっと全部の講義が終わった)
ロビとメイア、そしてカサリは帰宅のため、いつものように正門に向かって歩いていた。
「ねえ、ロビ、なんか今日、エイナの取り巻きがこっちをチラチラ見ていなかった?」
「ボクも視線を感じました」
「たぶん、昨日、僕がティラーナ教授の研究室に行ったから、気に入らないんじゃないかな」
「あの子たち、何かにつけて言いがかりをつけてきて、ホント、不愉快だわ」
「メイア、カサリ、今日はちょっと用事があるから、ここでお別れでいいかな」
「あら、どうしたの?」
ロビは少しかがみ、メイアとカサリだけに聞こえる声でしゃべり始めた。
「ティラーナ教授に呼ばれているんだ」
「そう、いいわよ」
「お兄様、いつものお別れの挨拶」
「カサリ、ここはウリシア王国で、あなたはオトイク王国の貴族よ。あまり目立つ挨拶は良くないわ」
「でも、お兄様はお兄様ですから」
「じゃあ、一日置きにしたらどうかしら。それなら私も目立たないように協力するわ」
「はい。メイア、わかりました」
(へえ、カサリ、メイアの言うことはちゃんと聞くんだ)
「じゃ、二人とも、また明日」
ロビは講堂のある建物を大回りをし、後ろから誰も付いてきていないことを確認しながら研究棟へ移動した。
そして昨日と同じように受付を済ませた。昨日と違うのは、リリスが既に受付横のソファに座っていたことだ。
研究室に入ると、リリスはハーブティーをティーカップに注いでテーブルに出した。
「ねえ、ロビ、一年前の事件のこと、教えてもらえるかしら。私が『
「その通りです。魔力暴走のひとつ、
「初めて聞く名前だけど……」
「魔力暴走には三種類あります。ひとつは魔法発動者の能力限界を超えて肉体崩壊を起こし停止することができなくなるものです。もうひとつは魔道士が集団で魔法を発動した時に失敗し、相互の魔力を引き出しあうものです。どちらも肉体が蒸発すれば止まるのですが、肉片が飛び散ったような状態になると爆発的な魔力暴走が起きます」
リリスは不安そうな表情をしてロビの顔を見ていた。
「そうなの?そんな恐ろしいことが起きるのね。魔力暴走という言葉は知っていたけど、そんなものだったことまでは知らなかったわ。ということは、
リリスは、ハーブティーを一気に飲み干した。
「続けて」
「
「どうしてそれを……」
「一年半前、表沙汰にはなりませんでしたが、教授が生徒を魔法で殺そうとしたことがありました。僕は殺されそうになった方です」
「憶えています。他の者には単に罰を与える程度の魔法に見えていたけど、私は殺傷能力のある魔法であることに気が付き、魔力を吸い取って発動を失敗させたわ。まさか、あの時、気づいていたの?」
「はい、僕もあの魔法は知っていましたので、本気で殺そうとしていること、そしてリリスが魔力を吸い取って発動に失敗させたことに気が付きました」
「あの時はごめんなさい、あの教授の罪を立証できたのに何も言えませんでした」
「大丈夫です。リリスが飛び級で教授になったため、立場が弱いことは理解してます。医学界でもよくある話です」
ロビもハーブティーを飲み干し、リリスのサイドテーブルからハーブティーのポットを取ってきた。
「飲んでいいですか?」
「ええ、どうぞ」
ロビはリリスと自分のティーカップにハーブディーを注いだ。
「
「あの時、普通に魔法を発動させただけよ。何か他にも条件があるの?」
「はい。マナの量です。マナは均等に存在しているのではなく、
「ロビは、どうやってそれに気が付いたの?」
(マナが見えるとは言えないしな……そうだ)
「リリスのそばで、魔力がマナとぶつかった時に起きる発光現象を見つけました。発光現象はマナが濃い場所で起きます」
(これは本当の話だから、大丈夫だろう)
「それでどうやって止めたの?」
「メイアのカチューシャを使いました。あれは
「つまり、殺せるっていうこと?」
「ええ、至近距離であれば」
「魔法って、まだまだわからないことがあるのね」
リリスはソファから立ち上がり窓のそばに歩いて行った。そして自分自身を抱きしめるように両腕を掴み、身を震わせている。
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ロビも立ち上がり、リリスの前に立つと、正面から抱きしめた。リリスは背が低いので、ロビの肩しか見えていないだろう。
「
リリスはロビの背中に手を回し、自分の顔をロビの肩に押し付けた。
「あとは
「もういいわ。恐ろしすぎて、今の私には、ちょっと正常な判断ができないから……」
少しの間をおいてリリスは顔を上げた。
「もし、
「中庭にいた者たちの魔力も吸い込んで循環し、リリスが耐えられなくなった時に肉体が崩壊して爆発します。リリスの魔力を無効化した時の感じだと、王立学院全体が吹き飛びます」
「でも、ロビ、あなたの反射魔法を使えば被害は私だけにすることもできたのでは?セバス=クロティス元魔導師とのこと、エイナから聞いたわよ」
「できますが、そんなことをしたらリリスの肉体が崩壊して血の雨が降ります」
「じゃあ、あなたの対処が失敗したらどうなっていたの?」
「僕は自分のオドも削ってしまい、激痛で失神、
「あなた、どうしようもない生徒だわ」
リリスはロビの顔を両手で掴むと、キスをした。
「私の初めてよ……」
「あ、ありがとうございます」
リリスは再びロビの肩に顔をうずめた。ロビは突然の出来事にそっけなく礼を言うことしかできなかった。
(これって、昨日の返事?でも、そういう雰囲気でもないかな)
「もし、
「方法は二つあります。僕も魔力吸収ができます。しかし
「もうひとつは?」
「聞かない方がいいと思います」
「教えて」
ロビはリリスの耳元で囁いた。リリスの顔色は急に蒼白になり、身体から力が抜けた。
「リリス、大丈夫ですか?リリス、しっかり」
(無理もないかな。えっと、失神した時は頭を低くするんだっけ)
ロビはリリスを抱きかかえたままソファに座り、リリスの足をソファのひじ掛けに乗せた。十五分ほどでリリスの意識は戻った。
「ごめんなさい、そんな恐ろしいこととは思わなくて。ちょっと身体を起こしてくれる?」
リリスはソファから手を伸ばし、キャビネットの引き出しから一枚の紙を取り出した。
「これ、実はちょっと気に入っているの。まるで神話の挿絵みたいでしょ」
リリスはロビにもたれかかりながら話し始めた。
「僕がリリスを抱きかかえているところを描いた版画ですよね。すぐに女子生徒に囲んでもらったので、ほとんど想像で描いたものかと思いますが」
「あの時、なぜかとても人気があって、小金貨一枚で、五百枚以上売れたそうよ」
「それはすごいです。モデル代、もらいたいぐらいです」
「そうね。しかも、ちょっと胸のところが増されていて、いい感じだわ」
「リリス、男性は必ずしも大きい方が好みとは限りません」
リリスは笑った。ジト目で笑うリリスは本当に可愛い少女である。
「でも、リリスの年齢でキスが初めてって、まずくないですか?」
「え、ちょ、ちょっと、人がロマンチックな気分に浸っている時に……私には研究があるからいいのよ。それに私は一妻多夫を目指しているの。あなたは絶対に一夫多妻の訳あり案件になるわ」
「そうですか」
リリスは威勢のいい表情から一転、暗い表情になった。
「悪いけどもう少し一緒にいてくれないかしら。さっきの話、恐ろしすぎて、吐きそう」
「大丈夫ですよ。いつまでもいます」
(リリスの『一妻多夫』は遠そうだな)
ロビはリリスを抱きしめた。
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