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誰のための修学旅行

誰のための修学旅行


世間ではバブルがはじけて就職氷河期に入ったころ、
私が所属する高校の一学年は、修学旅行について揉めていた。
 
高校二年生の修学旅行は、遅くとも行き先を一学年の最初には決める。
その学年は遅かった。
 
車椅子の生徒が二人いたからだ。
 
担任のひとりが言った言葉が忘れられない。
「修学旅行に生徒が自分の意志で参加しないのは仕方がない。
しかし、
最初から参加できない生徒がいてはいけない!
全員が参加できるような修学旅行であるべきだと私は考えます!」
 
車椅子の生徒が別行動ではいけない。
一緒に参加できるプログラムを。
この場合はどうするか?
その場合はどうするか?
 
議論に議論を重ねた。
私はその修学旅行には同行せず
修学旅行に行けなかった・行かなかった生徒の対応で
学校に残っていたが、
 
車椅子の生徒二人は、
修学旅行でなければ体験できないようなことをやれたと、
後から伝え聞いた。
 
月日は流れ、
 
「ゆとり教育」が導入されようとした初期のころ、
私は転勤して他の学校におり、
一学年の担任だった。
 
修学旅行で揉めた。
 
県が「海外修学旅行の試行」を募り、校長が引き受けてきたからだ。
行き先は韓国。
しかし、その学年には北朝鮮国籍の生徒がいた。
私のクラスではなかったが。
 
私も言った。最初から参加できない生徒がいてはならない、と。
すると、
 
「今どきの生徒は、修学旅行を休むなんてザラですよ。
ひとりやふたり、行けない生徒がいても仕方ないでしょう。
 
違う!自分の意志で参加しないのと、
参加したいのに行けないのとでは違うんだ、
 
そういう意見は圧倒的少数だった。
 
北朝鮮国籍の生徒の担任は、韓国修学旅行反対だったが、
会議直前に校長室に呼ばれていた。
何を言われたかわからない。
 
だが、その担任が意見を変えたので韓国修学旅行は決まった。
 
私は修学旅行より前に事故で勤務できない状態になったので、
どんな旅行だったか知らない。
 
北朝鮮国籍の生徒は修学旅行に行かなかった、それだけは知っている。


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完全在宅で小遣い稼ぎ!持病があるので外で働けません。在宅ワークを活用しています。特技は川柳・詩・切り絵・ライティング。アニメオタクなのでオタク川柳で過去に一位神を受賞しています。文章は調子のいいときなら一日一万字書けます。今はそういう無理はしていません。

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