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昭和なスナックの日常4

昭和なスナックの日常4


小説風 本当にあったお話
ある夜のとあるスナックでの出来事。
 
そこは昭和な雰囲気のスナック。
レトロ感漂う店内。
お客が15、6人も入れば満席になる。
そんな店内に今夜もお客がやってきた。
 
今夜もいつものように扉が開く。
カラン、カランと音がする。
そしていつものようにママが声を掛ける。
ママ
「いらっしゃいませ」

「あら、あやちゃん、お仕事終わり?」

あや
「ママ、こんばんは、そうです、仕事終わりにそのまま来ちゃいました」

ママ
「ありがとうねえーはい、おしぼり」
そういいながら、温かいおしぼりを渡す。
いつもの流れ。

あや
「今日は雨だからお客さんは少ないかもね」

ママ
「そういう日もあるから…」
ちょっと寂しそうな顔をする。

あやは常連客で、初回の客Bの被害を被った女性。
被害とは何かは初回の
「昭和なスナックの日常1」をご覧ください。

名前を付けたほうがわかりやすいから、これから出てくる常連さんは愛称で呼ぶことにする。
お店で呼ばれる名前ではない。

誰も他にお客がいないときは、あやとママは話し込んでしまう。

今夜は誰もこないと思ったのか、ママが話し始めた。
ママは、ある勉強会に参加していて、人生について偉い人の教えを分かりやすく話してくれる。

今回はその話から、人として生きていく上で必要なことという話になり、どういうわけか、常連さんの話へと話が変わっていった。

ママがこの間、すごく面白かったことがあったと笑いをこらえながら話し始めた。
あやは、何がそんなに可笑しいのだろうと、ワクワクしながら聴いていた。

ママ
「ちょっと前にね、常連さんの男女五人がカウンターに座って話をしていてね、その五人がなんと、五人ともまともなことを言わないのよ、話題が悪かったのもあるけどね」
「聴いていて呆れることばかり話しているのよ」
「内容はちょっと言いにくいから言わないけどね、人として、社会人としてどうなのよって、思うことがあったの」

「でも、お客さんだし、自分には関係ないことだから黙っていたけど、五人が五人とも、同じ考え方をしていたから、本当に呆れたわ」
「本当は、言ってやりたかったわ、非常識ねと」

あや
「言ってやればよかったのに」

ママ
「言えないわよ、だからその代わりに、お腹の中でしっかり笑ってたわよ」
「だってね、この五人さんね、歯がないのよ、歯がね、歯がみんな少ないのよね、そういう人が揃っちゃったわけでね、可笑しかったの」
「前歯がみんな無いからね、ママは言うのよ、飲んでばかりいないで、歯を入れたらってね」

あや
「ぷっ、ママ、何を言うかと想ったら、本当にそうなの?」
あやは思わず吹き出していた。

ママ
「本当にそうなんだって、もう長いこと通ってきてくれてる人たちだからね、多少は言いにくいことも言うわよ」
そう言うとママとあやは大笑い。

あやは、思い出したようにママに言う。

あや
「歯が無い人はだらしが無いよう見えるから損するって言ってましたよね、その五人さんはどうなんですか?」

ママ
「類は友を呼ぶで、同じ考えだからねえー、ママの口からはなんとも言えないわね」

あや
「歯は大事ですね」

ママ
「そうよ、ママは3ヶ月に一回は歯石を取りに行ってるのよ、年を取るとね、メンテナンスが大事なのよ」 

あや
「そうですね、私も来月予約してるから行ってきますね」

ママ
「予約しないとなかなか行く気にならないからね」
そう言うとまた思い出して笑うママだった。

こんな話、お客さんが居たら出来ないわ。これは内緒のお話し。

今夜の話はいかがでしたか?
 
非日常が日常のスナックでの一夜の出来事を面白く小説風に描いていきます。
 
よろしかったら、「昭和なスナックの日常」の常連さんになりませんか?
 
 
~今回はここまで~
 
   2022年5月27日金曜日
 
      ライター:唯李
 
 
 














 
 

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唯李(ゆり)と申します。
stand.fmでオリジナル小説を朗読しています。
小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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