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昭和なスナックの日常21

昭和なスナックの日常21


小説風 本当にあったお話
ある夜のとあるスナックでの出来事。
 
そこは昭和な雰囲気のスナック。
レトロ感漂う店内。
お客が15、6人も入れば満席になる。
そんな店内に今夜もお客がやってきた。
 
今夜もいつものように扉が開く。
カラン、カランと音がする。
そしていつものようにママが声を掛ける。

ママ
「いらっしゃいませ」

いつものように、楽しげな会話が交わされていた。
今夜は、すーさんが財布を落とした話しになった。

すーさん
「この間、ここへ着いたとき財布がなかったんだよね」
「だからここへ来る途中で財布を落としたと思うけど、一応自宅にあるか確認のために戻ったわけよ」
「でもなかったから、やっぱり、落としたんだってなったんだけど、ママがさ、私の方がよく見えるからもう一度ママが探してくるって言って、お店から俺の自宅まで往復してくれたのよ、すごいでしょ」
と、話すすーさんだった。

すーさんは、自転車で来ていたので、ママはすーさんの自転車を借りて同じ道のりを往復したときのことを詳しく話した。

でも結局なかったから、警察に届けたら、なんと拾って届けてくれた人がいて、すーさんの財布もお金も戻ってきたそうだ。
お礼に商品券を渡したとすーさんは話していた。
すーさんは、どこに落ちていたのかが気になって拾ってくれた人に聞いたそうだ。

財布がどこに落ちていたのかと言うと、その日というか、そんなところには行ったことがないというところに落ちていたらしい。

すーさんとママは想像した。
すーさんが財布を落とした。
すーさんの財布を拾った人が二人いる。
最初に拾った人は、どうしようとしたのかは不明だが、何かの拍子に帰宅途中で落としてしまったか、わざと捨てたかのどちらかだろうと。
だから落ちていたところは、最初に拾った人の近所かもしれない。
二回目に拾った人は、すぐに交番に届けた。
そんな流れだろうという結論に至った。

一回目も二回目も中身を取らずにいてくれたことに感謝して、日本が平和な国であることに感謝だねという話しで落ち着いた。

すーさんの話は丸く収まったが、ママが思い出したように話し出した。

ママ
「そう言えば、この間ね、お客さんがお勘定するときになって、カバンがないって言うのよ、ここへ来たときは持ってきたって言うのよ、カウンターに置いたって言い張るのよ、かなり酔っていたからねえ」
とママは話しながら、不愉快だったことを思い出していた。

ママ
「頑として、持ってきたって言い張って、私が取ったとまで言うので、お勘定はツケにしておくから、今夜はこのまま帰っていいですと言って帰ってもらったのよね、そしたらね、次にきた時はケロッとしているの、だから、その日のお勘定のときに、この間の分もいただきますねって言ったら、なんのことだというのよ、まったく呆れてしまったけど、記録していたのを見せて、カバンはしっかり持ってこられていたので、あの日は勘違いしたのだということだから、しっかりいただいたけど、あの日のことは全く覚えていないと言って、お詫びもなかったわ」
と、そう言うママに、すーさんはその客は誰なのかを聞いていたが、みんなは聞くまでもなく想像は付いていた。

みんなは思った。
ああ、あの人ね。
過去回を読むとなんとなくこの人かなって、わかりますよ。
このお客については他にも親切が無駄になった話もありますが、それはまた別の機会にでも。

今夜の話はいかがでしたか?
 
非日常が日常のスナックでの一夜の出来事を面白く小説風に描いていきます。
 
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~今回はここまで~
 
   2022年6月21日火曜日
 
      ライター:唯李
 
 
 
 







 
 
 

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唯李(ゆり)と申します。
stand.fmでオリジナル小説を朗読しています。
小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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