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年下の男の子2

年下の男の子2



子供たちが寝静まった深夜、いつも通り配信アプリを開く。
自分の配信の前に他の人の配信を覗きに行ったりもする。

その日はたまたまイケメンのイラストが目に留まり何の気なしにサムネをタップした。

軽快なBGMに乗せて軽快に話すイケメン。
私が入室すると「いらっしゃい!ゆっくりしていってね!」と声をかけられる。
「はじめまして!こんばんわー」
と型通りの返事をしてしばらくROMを決め込んだ。
耳に心地いい低音ボイス。
そしてよく笑う。
気づけば私は笑顔になっていた。

自分の配信が終わって、いつも通りお礼ツイートを、とTwitterを開くとDMに通知が来ていた。

最近はDMの通知を見ると憂鬱な気持ちになることが多い。
所謂、ガチ恋勢。
「どうしたらりんちゃんと付き合えるの?」
「りんちゃん💕今度ご飯一緒に行きませんか」
「僕の自撮り送ります。りんちゃんの顔も見たいな」

中の人を知ったらそんな気なんて無くなるくせに。
今まで送ったプレゼントの金返せとか言ってくるくせに。
言われたことはないけど、容易に想像できる。

だからまたそんなメッセージなんだろうな、とウンザリしながら開くと、さっきお邪魔したイケメンイラストの配信者さんからだった。

「はじめまして。突然のDM失礼します。先程は僕の配信に遊びに来てくれてありがとう。
実は前からりんさんのことを知っていたので配信に来られてビックリしました。
嬉しかったです。また是非遊びに来てください。お待ちしています。」

よくある営業メールだとは思った。
けど、嬉しかった。

「先程はお邪魔しました!知られていたとはビックリしました!
とても素敵な声でお話も楽しかったのでまたお邪魔しますね!」

当たり障りのない返事をするとすぐさま返事が来た。

「僕はまだ配信を始めたばかりで周りに相談に乗ってくれる人もいなくて……もし良かったら今度お話して貰えませんか?」

確かに私の方が配信歴は長かったけど、既に人気は出ているみたいだったし、むしろこっちが教えて欲しいわ!っていうかそもそも男子と女子じゃスタンス違うしなんもアドバイス出来ることなんてないけど、けど、あの低音ボイスとお話はしたい。
どうこうなることなんて絶対ないし、ちょっとお話するくらいならいいか。
なんて軽い気持ちでOKの返事をしてしまった。

「実はずっとお話したいと思っていたけど、なかなか勇気が出なくて……
だから今めちゃくちゃ緊張してます」
「え、私の配信来たことあるっけ?」
「少し前に1度だけ。共通のリスナーさんがオススメしてくれて」
「そうだったんだ!気づいてなかった!」
「実は僕、こうやって勇気出すの初めてですよ」
「え?」
「りんさんと仲良くなりたくて、勇気出しました」
「あはは!ありがとう!」
「信じてませんね?本当なのに……」
「っていうか、普段もその声なの?!イケボすぎない!?」
「ははっ!これが通常運転ですよ。褒めてもらえるの嬉しいなぁ」
「私もキャワボに生まれたい人生だったよ」
「僕、りんさんの声めちゃくちゃタイプですけどね」
「えー?コンプレックスでしかないよー!ガラガラだし低いし!」
「僕は好きですよ」

低音ボイスのイケボに、好きですよ、と言われて落ちない女子、いなくない?

それからは毎日のように

「今日お話できますか」
「声聞きたいです」

猛攻撃に耐えられる訳もなく。
相談、という名目で頻繁に通話するようになり、話せば話すほど人柄にもどんどん惹かれていって、気付けば私は

その人のことを好きになってしまっていた。

好きになるだけなら、片想いだけなら、行動に移さなければ、セーフ!
どうせ絶対会わないし、会えないし、っていうか既婚子持ちのアラフィフってバレたら終わる。

だからつかの間、ちょっとだけ、夢見るくらい許して欲しい。

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いくつになっても恋は楽しい

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