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脚本~恋人たちの協奏曲~第五章

脚本~恋人たちの協奏曲~第五章


タイトル【恋人たちの協奏曲】
 
第五章
『恋人たちの協奏曲』
 
~クリスマスの曲が流れる~
 
~真理のひとりごと~
『もうすぐ、クリスマスかあ。あのときは、この世の終わりかと思うくらいに落ち込んだけど、人って案外タフなんだなあ…。』
 
ナレーション
『真理は、あの日涼太から、かかってきた電話のことを思い出していた。ここは、休日に涼太とよく来ていた喫茶店だった。温かい紅茶が真理の冷めた心を温めてくれていた。』
 
~涼太のひとりごと~
『俺は何をしてたんだろうか。この二年間を。俺はダメな男だな。彩花にフラれて、真理にも愛想つかれて、もうすぐ、クリスマスなのに、ひとりで過ごす羽目になるなんて…。』
 
~曲が終わる~
 
ナレーション
『あの日のことを思い出していた。電話を真理に掛けたあのときのことを。』
 
~電話の音~
 
涼太
「まり、俺だけど、あの…。」
 
真理
「涼太さん、ごめんなさい。もう二度と連絡してこないでください。さようなら。」
 
~電話が切れた音~
 
~喫茶店内の曲が聴こえる~
 
~喫茶店の扉が開く~
~カランコロンと音が鳴る~
 
健太郎
「真理さん、お待たせしちゃったかな、お久しぶりですね。ここ、いいですか。」
 
 
真理
「はい、いいですよ。あの、
お隣の方はあやさん…ですか?」
 
健太郎
「あっ、はい。そうです。」
 
彩花
「ご一緒していいですか?初めまして、彩花です。少しお話をしたくて、無理を承知で健太郎さんにお願いしました。」
 
真理
「はい。どうぞ、お掛けください。」
 
 
ナレーション
『健太郎と彩花は、ホットコーヒーを頼んでしばらくは、世間話をしていたが、コーヒーが運ばれてきて一口飲んだところで、本題を口にした。』
 
~コーヒーを飲む音、ソーサーにカップを置く音~
 
健太郎
「真理さん、先日はひどいところを見て心がひどく傷付いたことだと思います。僕もそうです。今日は、彩花さんが真理さんにどうしても謝りたくて、そしてどうしても話しておきたいことがあるというので、こうしてお時間を作っていただきました。」
 
真理
「あのときは、ひどい顔をしていたでしょうに。それなのに、声を掛けてくださってありがとうございました。すごく助かりました。健太郎さんに救われました。でもあの偶然が今でも信じられません。涼太さんの知り合いだったなんて、それもあやかさんの…。」
 
彩花
「あのときのことを見られていたなんて、私も知らなかったんです。あのときは、私もどうかしてたんです。父の死を受け入れられなくて、どうしようもなくて、だから、涼太さんの優しさに甘えたかったのかもしれません。両親が生きていた、涼太さんと付き合っていたあの頃の自分でいたかったのかもしれません。」
 
真理
「結果的には、それが原因で別れることになりましたけど、それは彩花さんのせいではありませんから、気にしないでください。」
 
健太郎
「真理さん、真理さんはもう涼太のことは嫌いですか?憎いですか?殺したいくらいに、憎いですか?」
 
真理
「健太郎さん、あはは…そこまでは、ないですよ。」
 
健太郎
「そ、そうですか、それじゃまだ少しはあいつのことを思ってますか?」
 
真理
「そうですね。実はまだ好きみたいです。お調子者のところとか、子供みたいにすねたり、笑うところなんかを見てると、私まだ好きなんだなあって思ったりしています。でも、ちょっと頼りないところもありますけどね。あはは、何いってるだろう、私ったら…。」
 
彩花
「ひょっとしてまだ涼太さんと付き合いたい気持ちがあるのではないですか?」
 
真理
「そうかもしれません。でも、だからといって今すぐ付き合いたいというわけでもありません。あの光景を見ていますから…。」
 
~コーヒーを飲む~
~三人はそれぞれコーヒーや紅茶を飲んだ~カップがソーサーに置かれる音~
 
彩花
「真理さん、私涼太さんと別れるとき、逢って話をせずに別れました。遠距離だったこともありますが、あのときちゃんと別れていればこんなことにならなかったと思うんですね。だから、真理さんにも私みたいに同じ思いをして欲しくないんです。苦しんで欲しくないんです。もう一度涼太さんと逢って話してからでも遅くはないと思うの。ダメですか?」
 
真理
「ダメじゃないですけど、涼太さんとのことはあなたに言われてすることではありませんから…。」
 
彩花
「ごめんなさい。」
 
健太郎
「真理さん、気を悪くさせたのなら、僕からも謝ります。でも、涼太は真理さんもわかっていると思うけど、悪いやつじゃないんです。」
 
ナレーション
『真理はもう一度考えてみると伝えて、ふたりを残して喫茶店を出た。』
 
~真理のひとりごと~
「そんなこと言ってもさ、涼太さんから連絡がくるはずもないからなあ…。」
 
~クリスマスソングが流れる~
 
健太郎
「今日は、クリスマスイブだね。きっといいことがあるよ。」
 
彩花
「いいことあるといいなあ。」
 
ナレーション
『健太郎と彩花は、クリスマスを祝うためにケーキを買って彩花のうちに入るところだった。』

~ポストを開ける音~
 
彩花
「あっ、ポスト見るね。あっ、手紙が届いてる。何だろう…。音楽事務所の名前だ…。」
 
 
~真理~クリスマスソングを口ずさんでいる~
 
「LA.LA.LA…。クリスマスくらいは、美味しい食事とお酒飲もうっと…。今頃涼太さんはひとりでお酒飲んでるのかな…。」
 
~電話が鳴る~
 
真理
「誰だろ…涼太さん。」
 
涼太
「メリークリスマス。まり」
 
真理
「メリークリスマス…なんで電話してくるのよ。」
 
涼太
「なんでって、クリスマスイブだから…。」
 
真理
「別れた相手に電話してくるなんて図々しいにも程があるわ。」
 
涼太
「ごめん。」
 
真理
「笑えるわ。あはは」
 
真理
「今日さ、クリスマスだから、食事沢山作ったんだよね。今から食べるところだから、じゃあね。」
 
涼太
「そうなんだ。美味しいワイン買ったんだ。俺もこれから飲もうと思ってるだ。じゃっ…。」
 
~電話が切れる音~
 
~真理のひとりごと~
『何が美味しいワインよ、一緒に飲もうっていうじゃないの?なんで電話してきたのよ、まったくもう…。』
 
~ピンポン~
 
真理
「誰だろ、クリスマスに…。」
 
~玄関に向かうスリッパの足音~
 
真理
「涼太さん」
 
~扉が開く音~
 
涼太
「メリークリスマス」
 
真理
「メリークリスマス」
 
涼太
「料理、余ってるんだろう、美味しいワイン、一緒に飲もう。」
 
真理
「しょうがないわね、あがって…」
 
涼太
「メリークリスマス」
 
~クリスマスの曲~弾き語り~
 
真理
「涼太さんには、やっぱり私がいないとダメね。」
 
涼太
「まり、俺にもう一度、まりを愛せるチャンスをくれないか。」
 
真理
「あっ、外…。」
 
涼太
「雪だ。ホワイトクリスマス。」
 
真理
「うん、いいよ。好き。」
 
ナレーション
『真理は涼太の背中から腰に手を回した。そして耳元でささやいた。』
 
ナレーション
『一方、彩花は、封書の中身を読んでびっくりしていた。』
 
彩花
「健太郎さん、見て、これって、すごい。」
 
健太郎
「僕が少し前に送っておいたんだ。その音楽事務所は、まだそんなに有名じゃないけど、知り合いがいて新しいことを始めるらしくて、世に出ていない曲で新人を探してるって聞いてね、デモを送っておいたんだ。」
 
彩花
「そうだったんだ。すごい。面接するから、来て欲しいって。後、何曲かあれば聞きたいって、すごい、すごい、けんちゃん、ありがとう。」
 
健太郎
「だから、言っただろう、いいことあるって。メリークリスマス」
 
彩花
「メリークリスマス。けんちゃん、大好き。」
 
健太郎
「これのおかげかな。大好きは…。」
 
彩花
「そんなことはないよ…。いじわる…、大好き。」
 
健太郎
「愛してるよ。あや。結婚しよう。」
 
彩花
「はい。」
 
ナレーション
『健太郎と彩花は、何気なく窓の外を眺めた。』
 
健太郎
「あっ、雪だ。」
 
彩花
「あっ、ほんとだ。ホワイトクリスマス、ラ~ラ~ララ」
 
~ホワイトクリスマスを口ずさむ彩花~
 
ナレーション
健太郎は、彩花の肩をそっと抱いた。
 
~曲が流れるなかで~
 
~エンディング~
 
自由にコメントを入れる。
 
涼太
「涼太の素直さに共感していただけましたか?甘い男のダメさ加減も女性の母性愛に助けられました。」
 
彩花
「恋心と両親の死と向き合いながらも自分の夢を諦めない純粋な女性の恋物語、いかがでしたか?」
 
健太郎
「優しさだけが男じゃない健太郎の強さが伝わったらいいなあ」
 
真理
「甘いなあ、でも自分の気持ちに素直に生きることが幸せになれる秘訣かもしれません。」
 
ナレーション
「恋はハッピーエンドがいいですね。幸せなクリスマスイブの夜を、メリークリスマス。」
 
彩花のお父さんさん
「ハッピーエンド」
 
~おしまい~
 
2022年10月8日土曜日 唯李😊⚜️
 

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唯李(ゆり)と申します。
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小説はモノガタリードットコムでアップしているものです。

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