魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-29 ☸ クルーガのお家芸
魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-29 ☸ クルーガのお家芸
魔法外科医の少年は癒し系~あらすじ
魔法外科医って結構、大変なお仕事。さらに転生者の受け入れまで。ほのぼのあり、シリアスあり、アクションあり、ギャグあり、ほどよくエッチもありの逆異世界転生ファンタジー。
<ロビ様、血管とかひとつずつ繋げていますけど、ぶわぁって治る治癒魔法というのは無いのですか?>
<あるよ。あるけど、あれ、障害が残るんだ>
<どういうことでしょうか?>
<切れた患部がぴったり合っていれば綺麗に治るんだけど、ずれているとそのまま治っちゃってリハビリが大変なんだ。特に太い血管や筋肉はちゃんとやらないと>
<なるほど、勝手に元通りになるわけじゃないんですね>
<そう。だから、障害を残さないよう、元通りに結合していくんだ>
(ハルカの世界では、魔法って、随分と便利なものと解釈されているんだな)
※本小説は、「小説になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」、「ノベルバ」、「ノベルビア」にも投稿しておりますので、お好みのサイトで読んでいただければ幸いです。
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魔法外科医は癒し系の少年~涼波ハルカの喪失-29 ☸ クルーガのお家芸
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魔学の講義が終わってリリスは講堂を出た。廊下を曲がったところでロビが話しかけた。
「ティラーナ教授、精神体分離魔法についての書物をお持ちじゃありませんか?書物室で探したのですが、一冊、抜けているみたいで」
「それなら、私の研究室にあります。良かったら今日、一通りの講義が終わったら私の研究室へ来ますか?」
「教授になると書物室から書物を持ち出せるのですか?」
「ええ、そうです。色々と手続きはありますが」
「わかりました。よろしくお願いします」
(リリスの口元が、一瞬、ぴくって動いた気がしたけど、気のせいかな)
振り返ると、メイアとカサリが立っていた。
「ねえ、ロビ、最近、ティラーナ教授の研究室によく出入りしているわよね」
「いや、よく出入りって、まだ二回だけだよ」
「お兄様、ボクはお兄様の部屋に一度も行ったことがありません」
「ティラーナ教授もなんとなくうれしそうよ。まさか、カサリだけじゃなくティラーナ教授まで……あなた、年下と年上って、もう。同い年には興味ないの?」
「そういう訳では……」
「ところで、ティラーナ教授ともカサリとも、何も無いのよね?」
「メイア、どちらも本当に……」
(えっと、本当に……いや、カサリとはディープキスする仲だし、リリスにはキスしてもらったし、男女関係がないと言い切るのは嘘つきになっちゃう)
「……肉体関係とかそういうのはないよ」
「ほんと?信じていいのね」
「うん、本当だよ」
「メイア、ボク、お兄様にはまだしてもらっていません。お兄様がオトイク王国に来られた時に水遊びに行き、一生懸命チラチラさせたのですが無視されました」
(確かに上から下までチラチラと色々見えていたよな。てっきり、水着が大きいだけかと思ってたけど、わざとだったんだ)
水着は、身体にぴったりとフィットするようなものではなく、洋服よりも薄い布地でできた短いシャツと短パンのようなものである。緩めに着たカサリの水着の隙間から見えた真っ平の胸や、動くたびにチラチラと見えた股間を思い出していた。
「ロビ、カサリからのお誘いを無視したの?女の子が男の子を誘うのって、とても勇気がいるのよ……あ、いえ、まあ、それは当然ね。カサリが八歳の頃の話だものね」
「メイア、八歳で肉体関係はダメですか?」
「ダメ。絶対に、ダメ……でも無いのかな?」
メイアは何かを思い出したようだ。カサリが話し始めた。
「歴史によれば
「それ、私も聞いたことがある。カサリが言うと説得力があるわ」
「カサリ、身体が成長していないと負担が大きいんだよ。特に女の子は体内で炎症を起こして病気になりやすいんだ。これは医学的な見解だからね」
「あ、予鈴がなったわ、席に着こうか。続きは昼食後にしよ」
(うう、これで終わりじゃないんだ)
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昼食後、いつもの五人ではなく三人で中庭のベンチに座っていた。
「ねえ、お兄様、メイアにカチューシャの使い方を教えてあげてください」
「教えてくれなくていいわ。私、暗殺者になっちゃうから」
「でも、護身にも使えるので。じゃあ、ボクが教えます」
「そういえばカサリが魔法を使ったところ、見たことないわ」
「はい、使っていませんから。それよりちょっと貸してください」
「どうぞ」
メイアは頭からカチューシャを取るとカサリに渡した。
(カチューシャ取ったメイアもかわいい)
「じゃあ付けます」
「ロビ、にやけているわよ。見とれているの?」
「うん、メイアに」
「もう。じゃあカサリ、教えてくれる?」
「はい。まずは右側の
「あ、本当だ、
「はい。右側の小さい
「ほんとだ」
「今度は小さくてもいいので、
「ええ、『
「じゃあ、ボクがこれを消してみせます」
カサリはメイアの手のひらで光っている光の球に触れた。光の球は輪郭を失い消えた。
「すごいわ。魔力は供給し続けていたのに」
「もっとすごいこともできます。メイア、昇天ものです。ボク、今は
「カサリ、危ないからダメだよ」
「でも、お兄様、とても気持ちいいです」
「カサリは抜いてもらったことがあるの?」
「はい、全部じゃないですが、なんかこう、ふわふわっと身体から何かが抜けていく感じです」
「カサリ、とりあえず、止め方を教えて」
「止めるには、左側の
カチューシャの左側にある
「へー、これ、おもしろいわ。練習してみる」
メイアがカサリの頭からカチューシャを取ろうとすると、カサリはそのままメイアの胸に顔を押し付けた。
「あ、カサリ、どうしたの?」
「ボク、メイアのことも大好きです」
「あの、ありがとう」
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一通りの講義が終わると、ロビはメイアとカサリと一緒に講堂から出て、話をしながら正門を出た。
「お疲れ様です。今日はこれで失礼します」
ロビは警備兵に挨拶をした。
そしてロビはメイア達に話しかける時に少し大きめに横を向き、後ろにエイナの取り巻きが歩いていることを確認した。彼らは普段、王立学院が用意している乗合馬車で通っている。そろそろ走らないと乗合馬車に乗り遅れる時間だ。
(今日は、尾行ありかな?)
「あ、僕、講堂に忘れ物しちゃった。一旦戻るね、じゃあ今日はこれで」
「じゃあ、また明日」
「お兄様、いつもの挨拶は?」
「あ、うん、じゃあメイア、ちょっとそこに立っていて」
「え?いいわよ」
ロビはカサリといつものようにディープキスをした。唇を離してメイアを見ると、少々顔を赤らめえているように見える。
メイアに立っていてもらったのは、エイナの取り巻きから見えないようにするためである。これはこれで見られていると面倒なことになりそうだからだ。
「じゃ、忘れ物を取ってくるね」
ロビはわざと大きな声でそう言うと、正門の方を振り返った。慌てて隠れる生徒が三人、エイナの取り巻きである。
(普通に歩いていれば怪しまれないのにね。三人?もう一人いるはずだけどな。そうか、研究棟の方で待ち伏せしているのかも)
堂々と正門を通って講堂に戻りながら三人が尾行していることを確認すると、一旦、講堂に入り、ドアを閉めた。講堂の窓がまだ開いている。施錠は管理人が行うため、まだ開けっ放しになっている……というか、ロビが講義中に開けておいた。
(じゃあ、ここからはクルーガ家のお家芸、魔法複数
ロビの頭上に三つの魔法陣が現れ、ロビの身体を光で包んだ。それぞれの色が合わさり、白色の光になった。ロビは講堂の窓から飛び降りると、猛ダッシュで人気の無くなった建物の間を駆け抜け、研究棟の近くまで移動した。
<ララ、今、大丈夫?>
(『
ロビのそばに魔法陣と共にナイトホークが現れた。ロビはナイトホークの頭と背を撫でた。
<ララ、ちょっとあの辺りを飛んで>
ナイトホークは大きな翼を広げて飛び立った。
<『視覚共有』。やっぱりもう一人、あそこにいるや。ララ、後ろから回り込んで、頭の毛をむしってくれる?>
「なんだ、こいつ、痛たたた!」
遠くから叫び声が聞こえる。ナイトホークは魔石鳥獣としては大型にも拘らず、ほとんど音を立てずに飛ぶことができる。エイナの取り巻きは、ナイトホークからの突然のいたずらに驚き、魔法で対処する間もなく研究棟の門の方へ逃げ出した。
<ララ、もういいよ、一旦、上空に上がって。警備兵に見られると厄介だから。下の方は見たままで>
少年は警備兵に呼び止められたようで、何か問い詰められているようだ。
(研究棟は、結構、警備が厳しいんだよ。理由もなくウロウロしていたら、貴族でも拘留されちゃうかもだね)
そうこうしているうちに、警備兵は三人に増えた。少年は今にも泣きそうな顔で研究棟から離れた。
<他の取り巻きは……まだここまで来ていないな。よし、ララ、そのまま屋根に降りて人の動きを監視していてね>
ロビは研究棟の受付に向かって歩いて行った。
「何か用があるのかね?」
前回、前々回の時は声をかけなかった警備兵が、珍しくロビに声をかけた。先ほどのことで警戒しているのだろう。それだけ研究棟は重要な施設である。
「王立学院中等部魔学科一回生、ロビ=クルーガです。リリス=ティラーナ教授にお会いするため、研究棟に来ました。許可申請が出ているはずですので、ご確認願います」
(ちゃんと理由があって手順を踏んでいれば、別に怖いものじゃない)
ロビは受付に通され、リリスのエスコートで研究棟の中に入ることができた。リリスは既に受付の前にあるソファに座っていたため、待たされることもなかった。
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