【読書レビュー】島本理生の「あなたの愛人の名前は」を読んでみた。
【読書レビュー】島本理生の「あなたの愛人の名前は」を読んでみた。
男女それぞれの視点が描かれた恋愛物語
島本理生さんの著書「あなたの愛人の名前は」は、6つの物語からなる短編集です。つぎの6つの物語が描かれています。
- 「足跡」
- 「蛇猫奇譚」
- 「あなたは知らない」
- 「俺だけが知らない」
- 「氷の夜に」
- 「あなたの愛人の名前は」
ひょんなことから浮気をする妻。婚約者いるのに別の男性に恋をしてしまうアラサー女性。肉体関係は求めるけど、恋愛したいという感情がない男性。
読んでいてヒリヒリするような、でも目が離せないようなお話ばかりです。
「恋人とは言えない関係」を持ったひとたち
「あなたの愛人の名前は」に出てくる主人公の多くは、恋人とは言えない関係を体験しています。芸能ニュースなどで、「不倫だ!」「浮気だ!」と大きく取り上げられて、仕事を失う人もいる現代社会。
浮気、不倫だけでなく、曖昧な形の関係を持つ人は、一体どれくらいいるのでしょうか?
わたし自身は恋愛経験が少なく、片思いをしたことはあるものの、きちんとしたお付き合いをしたのは今の夫だけです。
だから、自分が経験したことのない主人公たちの恋愛に惹かれたのかもしれません。
「あなたの愛人の名前は」では、男女の揺れ動く心情が丁寧に描かれており、疑似体験しているような不思議な感覚が味わえます。
おすすめは「あなたは知らない」「俺だけが知らない」
6つの物語のなかでも、特におすすめしたいのが「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」です。ひとつの関係を、男性側と女性側の視点で別の物語として描かれています。
同棲している婚約者がいるのに浮気をする女性「瞳」の「あなたは知らない」
バーで知り合った瞳さんと、月に1、2回会うだけの関係を続ける男性「浅野」の「俺だけが知らない」
周りから羨ましいと言われるパートナーは、本当に自分とって誠実な相手なのか?相手の気持ちを都合よく見て見ぬふりをしていただけではないのか?
そんな疑問がムクムクと湧いてきて、ふたりの結末まで一気に読んでしまいました。
島本理生さんが描くグレーな男女関係には、妙なリアルさがあります。
「不倫する気持ちがわからない」「自分には関係ない」と考えている人もドキッとするような作品ではないでしょうか。
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