ボイストレーナーへの道のり ③ 演劇の道をゆく
ボイストレーナーへの道のり ③ 演劇の道をゆく
中学・高校時代のボクは、音楽をとても愛していました。
それでも、プロになりたいという気持ちは「ほぼ」ありませんでした。
というか、自分の将来について大して深く考えたことがありませんでした。
高校三年生のころ、文化祭で演劇をすることになりました。
「演劇って面白いな!」
そう思いました。
それでもやっぱり演劇よりも音楽の方がずっと大好きでした。
でも当時は、X-JapanやBUCK-TICKなど、ビジュアル系ロックが流行っていたので、音楽をやるということは、
「髪の毛を染めて、スプレーで髪の毛を立てて固めて、モニターに足をかけて、ヘッドバンキングしながら、歌わないといけない」
と勝手に思い込んでいました。
エスカレーター式に大学に入れる高校に通っていたボクは、その大学の演劇サークルを覗いてみることにしました。
「!! (✽ ゚д゚ ✽) !!」
それは、これまで全く見たことも感じたこともないものでした。
「小劇場」というスタイルの演劇でした。
コミカルで笑えて、かっこよくて、感動的で、……とにかくこんな表現があるんだって、ほんとびっくりしました。
Journeyを初めて聞いた時(ボイストレーナーへの道のり①参照)に負けず劣らずの衝撃が走りました。
「大学に入ったら演劇をしよう!」
舞台を見てすぐにボクの気持ちは固まりました。
実は高校の頃からこっそりボイトレの本を買って少し練習していました。
(……っていうことは、当時のボクは「プロになりたい」と無意識に思っていたのかもしれません)
その本の中で、基本となる腹式呼吸とは、
『お腹を膨らませるようにして息を吸って、そのままを維持するかむしろ更に膨らませるつもりで声を出す』
というもので、自分なりに「こんな感じかな」と思う感覚を掴んでいました。
入学早々に憧れの劇団に入団しました。
役者として稽古の毎日でした。
ですが、なかなか思うように声は出せませんでした。
劇団に入って「はい、腹式の練習です。」と教えられたのは、
『お腹を凹ませて強い息を吐いて声を出す』というこれまでボクがやってきた練習と真逆とも言えるものでした。
「ボクの思ってるのと違うんですけど」
と言いましたが、
「腹式は、息を吸う時にお腹膨らませて、声出すときは息を吐くんだから、お腹は凹むんだよ」
といった風に説明されました。
釈然としない思いもありましたが、先輩たちは僕なんかよりもデカくていい声を出されていたので、従うほかありませんでした。
声を出すたびに、お腹が膨らんだり凹んだりで迷いまくりました。
それでも演劇を続けてくうちに、次第に声も出るようになってきて、今まで大好きだった音楽よりも演劇にどんどんとのめり込んでいきました。
役者としての才能は無いだろうなあとうすうす気付いていたので、脚本を書いたり演出したりといった事で、何か自分にしか出来ないものが創り出せるのではないかと夢見ていました。
演劇にどっぷり浸かる学生生活を送りながらも、ある日、演劇を辞めようと決断します。
後輩たちの行ったある公演を見て、「ああ、もう自分が続ける意味はないな」と思ってしまったのです。
というか、自分には、演劇を続けてゆく資格も才能も覚悟もないとないんだと気づいたのでした。
殴り合いのケンカをしたり、深く人を愛したり愛されたり、泣いたり笑ったり、怒ったり怒られたり、傷付けたり傷付けられたり、恨んだり恨まれたり、裏切ったり裏切られたり、………。
こういったことを避けて生きてきたボクが、小手先の演技や言葉で、
一体何を演じられるというのでしょうか。
どんな脚本が書けるというのでしょうか。
自分でもうすうす気づいていた、心の「弱いところ」。
これまでもずっと向き合わずに何とか済ませてきたのですが、この時も、もがいて戦おうとはせずに、やっぱり逃げ出してしまったのです。
ボクの演劇人生は、『逃避』『自己否定』という最悪の形で幕を閉じてしまったのでした。
~ ボイストレーナーへの道のり ④ へ続く ~
それでも、プロになりたいという気持ちは「ほぼ」ありませんでした。
というか、自分の将来について大して深く考えたことがありませんでした。
高校三年生のころ、文化祭で演劇をすることになりました。
「演劇って面白いな!」
そう思いました。
それでもやっぱり演劇よりも音楽の方がずっと大好きでした。
でも当時は、X-JapanやBUCK-TICKなど、ビジュアル系ロックが流行っていたので、音楽をやるということは、
「髪の毛を染めて、スプレーで髪の毛を立てて固めて、モニターに足をかけて、ヘッドバンキングしながら、歌わないといけない」
と勝手に思い込んでいました。
エスカレーター式に大学に入れる高校に通っていたボクは、その大学の演劇サークルを覗いてみることにしました。
「!! (✽ ゚д゚ ✽) !!」
それは、これまで全く見たことも感じたこともないものでした。
「小劇場」というスタイルの演劇でした。
コミカルで笑えて、かっこよくて、感動的で、……とにかくこんな表現があるんだって、ほんとびっくりしました。
Journeyを初めて聞いた時(ボイストレーナーへの道のり①参照)に負けず劣らずの衝撃が走りました。
「大学に入ったら演劇をしよう!」
舞台を見てすぐにボクの気持ちは固まりました。
実は高校の頃からこっそりボイトレの本を買って少し練習していました。
(……っていうことは、当時のボクは「プロになりたい」と無意識に思っていたのかもしれません)
その本の中で、基本となる腹式呼吸とは、
『お腹を膨らませるようにして息を吸って、そのままを維持するかむしろ更に膨らませるつもりで声を出す』
というもので、自分なりに「こんな感じかな」と思う感覚を掴んでいました。
入学早々に憧れの劇団に入団しました。
役者として稽古の毎日でした。
ですが、なかなか思うように声は出せませんでした。
劇団に入って「はい、腹式の練習です。」と教えられたのは、
『お腹を凹ませて強い息を吐いて声を出す』というこれまでボクがやってきた練習と真逆とも言えるものでした。
「ボクの思ってるのと違うんですけど」
と言いましたが、
「腹式は、息を吸う時にお腹膨らませて、声出すときは息を吐くんだから、お腹は凹むんだよ」
といった風に説明されました。
釈然としない思いもありましたが、先輩たちは僕なんかよりもデカくていい声を出されていたので、従うほかありませんでした。
声を出すたびに、お腹が膨らんだり凹んだりで迷いまくりました。
それでも演劇を続けてくうちに、次第に声も出るようになってきて、今まで大好きだった音楽よりも演劇にどんどんとのめり込んでいきました。
役者としての才能は無いだろうなあとうすうす気付いていたので、脚本を書いたり演出したりといった事で、何か自分にしか出来ないものが創り出せるのではないかと夢見ていました。
演劇にどっぷり浸かる学生生活を送りながらも、ある日、演劇を辞めようと決断します。
後輩たちの行ったある公演を見て、「ああ、もう自分が続ける意味はないな」と思ってしまったのです。
というか、自分には、演劇を続けてゆく資格も才能も覚悟もないとないんだと気づいたのでした。
殴り合いのケンカをしたり、深く人を愛したり愛されたり、泣いたり笑ったり、怒ったり怒られたり、傷付けたり傷付けられたり、恨んだり恨まれたり、裏切ったり裏切られたり、………。
こういったことを避けて生きてきたボクが、小手先の演技や言葉で、
一体何を演じられるというのでしょうか。
どんな脚本が書けるというのでしょうか。
自分でもうすうす気づいていた、心の「弱いところ」。
これまでもずっと向き合わずに何とか済ませてきたのですが、この時も、もがいて戦おうとはせずに、やっぱり逃げ出してしまったのです。
ボクの演劇人生は、『逃避』『自己否定』という最悪の形で幕を閉じてしまったのでした。
~ ボイストレーナーへの道のり ④ へ続く ~
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