魔法外科医は癒やし系少年~涼波ハルカの進撃-13 ☸ ロビの訪問
魔法外科医は癒やし系少年~涼波ハルカの進撃-13 ☸ ロビの訪問
魔法外科医は癒やし系少年~あらすじ
魔法外科医って結構、大変なお仕事。さらに転生者の受け入れまで。ほのぼのあり、シリアスあり、アクションあり、ギャグあり、ほどよくエッチもありの逆異世界転生ファンタジー。
<ロビ様、血管とかひとつずつ繋げていますけど、ぶわぁって治る治癒魔法というのは無いのですか?>
<あるよ。あるけど、あれ、障害が残るんだ>
<どういうことでしょうか?>
<切れた患部がぴったり合っていれば綺麗に治るんだけど、ずれているとそのまま治っちゃってリハビリが大変なんだ。特に太い血管や筋肉はちゃんとやらないと>
<なるほど、勝手に元通りになるわけじゃないんですね>
<そう。だから、障害を残さないよう、元通りに結合していくんだ>
(ハルカの世界では、魔法って、随分と便利なものと解釈されているんだな)
※本小説は、「小説になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」、「ノベルバ」、「ノベルビア」にも投稿しておりますので、お好みのサイトで読んでいただければ幸いです。
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魔法外科医は癒やし系少年~涼波ハルカの進撃-13 ☸ ロビの訪問
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週末の午後、ロビは学院の制服を着て大きめのバッグを背負い、馬に乗って屋敷を出発した。
「じゃあ、行ってくるね」
「行ってらっしゃいませ」
行先は、アグリクル家である。アグリクル家は上級貴族で広い農地を所有しており、農家や酪農家としっかりコミュニケーションを取りたいという理由から、農村地帯に屋敷を構えている。
そのためか、人口増加による食糧難に対しても早い時期から農地開拓や他国からの家畜のための子魔石獣の購入などに力を入れており、住人の満足度も高く、他の貴族が管理している農村などと比べると豊かな暮らしをしている。
王都から屋敷まで、馬車ならば五時間、馬であれば小走り程度に走らせて二時間ほどの距離である。
王立学院の生徒は、若干かしこまった場所では制服を着ていく。パーティーなどの場合は別の服を着るが、今日は夕食に招待されているだけので、制服がちょうどいい。
(わあ、あまりこっちの方、来たこと無いから景色がちがっておもしろいや。シエラ、元気かな、もう二年、会ってない)
ロビは、アグリクル家の門に到着すると、門番に挨拶をし名前を告げた。
(うわー、広いや。オリシス家よりも広い)
それから門番に指示された建物の前まで馬で移動し始めた。建物に近づくと、窓から女性がロビを見ていた。
(あ、シエラだ。元気そうで良かった)
シエラは小さく手を振ったので、ロビも手を振り返した。
玄関に着くと、ロビは馬を降りて召使いに
「ロビ、久しぶりね」
「お久しぶりです、シエラ」
ロビはソファから立ち上がって挨拶をした。
「背が伸びたわね、元気そうで何よりだわ」
「シエラも以前にも増してお美しいです」
「あら、ロビはお世辞が上手ね」
「いえ、僕は本当の事しか言いませんから」
シエラはロビに近づき、耳元で囁いた。
「今年は妹のサエラがあなたのお世話になる予定よ。よろしくね」
「え、は、はい、わかりました。あ、あの、これ、手土産です」
「あら、何かしら」
シエラは包みを開け始めた。
「お肉ね。私には細かいことはわからないけど………そうだ、シェフを呼んで」
「かしこまりました」
そばに立っていた召使いが客間から出ていった。
「そういえば、私、婚約したの。来年、結婚する予定よ」
「それはおめでとうございます」
「あなたのおかげよ。『袋』をしっかり掴んだわ」
「その、『袋』って」
「あなたのおかげって言ったんだから、わかっているでしょ」
シエラはロビを抱きしめた。
「シエラ……」
「いいの、抱きしめるぐらいなら問題ないわ。貴族の挨拶よ。本当にあなた、背が伸びたわね」
「はい」
「今日、来たのはレザルトのことでしょう?」
「どうしてそれを?」
「先週、サエラが帰省していてね、学院でレザルトがあなたに攻撃魔法を使ったところを見たと言っていたわ」
「サエラ、すごいですね。レザルト、目立たないように魔法を発動したのに」
「あの子、あなたがどういう男性なのか、結構、よく見ているみたいよ」
「そうでしたか」
ドアをノックする音がした。
「失礼します。シェフのアイレジアスです。肉をお持ちとのこと、拝見させていただきます」
「初めまして。ロビ=クルーガです」
アイレジアスは焼き印の押してある肉を見るや否や、かぶりつくように近づいて凝視し、大きな声を出した。
「おお、これはノトチェ印のボアル肉ではないですか。それも鮮度の高い極上物」
「あら、そんなにすごいお肉なの?私には普通のお肉にしか見えませんが」
「シエラ様、お耳を」
アイレジアスはシエラの耳元で何かを囁いた。シエラの表情が固まった。一分ほど経過した。
「ロビ、素晴らしものをどうもありがとう」
「いえ、アグリクル家を訪問するのですから、それにふさわしいものをと思っただけです」
「それでは、今夜の一品に加えさせていただきます。あと、他の方々にも食して頂こうかと」
「元よりそのつもりで大きなものをお持ちしました。皆さんで楽しんでください」
ロビがそう答えると、アイレジアスは一礼し、肉を持って部屋を出ていった。自分の素性があまりよく知られていない家を訪問する時は、手土産の質で扱いが決まる。これは平民ならではのクルーガ家の教えである。
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夕食は豪華なもので、ロビが持ってきたボアル肉はもちろんのこと、アグリクル家が管理している酪農地帯で飼育されている魔石獣の肉料理もなかなかのものだった。
食事はシエラと二人っきり、召使いが二人、給仕のために待機しているだけである。二人は学院の話で盛り上がっていた。
別の部屋からは大きな笑い声が聞こえた。
「お父様とお母様達ったら、ボアル肉の話を聞いたら、村長達まで呼んじゃって大騒ぎで食事をしているの。ごめんなさいね」
「いいえ、皆さんに喜んでいただけて、幸いです」
「ロビ、あんなに高いもの、大丈夫なの?」
「いえ、ふさわしいものを、という方が大切ですから」
「ありがとう。あなたってほんと、そういうところ上手よね」
「そんなことありません」
「後であなたの部屋に行くわ。ワインでも一緒に飲みましょう」
「はい」
夕食後、召使い案内されて浴場に行った。浴場は広く、真ん中に六人は同時に入れそうな大きなバスタブがある。ロビは身体を洗い終わるとバスタブに入った。横には女性の召使いが布を持って立っている。
(わあ、お湯につかるの久しぶりだな。うちにもバスタブあるけど、四人だと手入れの方が面倒だし。僕が放射系魔法を使えたら、お湯なんかすぐにいっぱいにできるのにな。どうやったら『呪い』は解けるんだろう)
「ロビ様、湯加減はいかかがでしょうか?」
「とてもいい感じです」
ロビは召使いから布を受け取ると、身体を拭き、ゆったりした服に着替えて部屋に戻った。召使いは、ロビが着ていた学院の制服を丁寧にクローゼットにかけた。部屋は来客用で、大きなベッドがあり、デスク、ソファ、テーブルなどもある。
「シエラ様をお呼びしますので、そのままお待ちください」
「はい」
しばらくしてドアをノックする音がした。
「どうぞ」
ラフな丈の長いワンピースを着たシエラと、ワゴンを押して召使いが入ってきた。ワゴンの上にはワインボトルが一本、グラスが二つ、他にはチーズなどを盛った皿が置かれていた。召使いはそれらをテーブルに移し、ワインをグラスに注ぐと部屋から出ていった。
「ロビ、あなたには本当に申し訳ないことをしたわ」
「いえ、大丈夫です。あの時、レザルトが魔法を
「もし、あなたがひとつだけお願いを聞いてくれるのなら、私はどんなに辛いことでも話すわ。でも、そのお願いは男性にとってとても辛いものよ。いいかしら」
「はい、シエラの願いであれば」
「ロビ、あなたのそういうところ、本当にずるいわ……今からあなたと私は全裸になるの。そして私はあなたの横に座ったり抱き着いたりしながらワインを飲み、話をする。でも、事を致してはいけないわ。できるかしら」
「生理現象だけ見逃して頂ければ」
「いいわよ、じゃあ脱ぎましょう」
(この展開は予想外だよ。でも、今日は泊まりということで朝からハルカとダリア、三回ずつ事を致してきたから自制心バッチリのはず、たぶん)
ロビとシエラは全裸になり、二人で並んでソファに座った。シエラはロビを抱きしめた。
(うわ、シエラ、気持ちいい。肌触りはやっぱりヒト族の方がいいかな)
「ずっとこうしたかったわ。私は婚約者の事を愛している。でも、あなたのぬくもりは忘れていないの。マリッジブルーって言葉、知っている?」
「いえ、初めて聞きました」
「あなたでも知らないことがあるのね。結婚前に何となく憂鬱になることよ。今はそんな気分」
「そうなんですか」
シエラはロビの髪を撫でながらワインを飲んだ。
「さあ、何でも聞いて。泣きたくなったら慰めてね」
「はい。レザルトと何があったのか教えてください。実は、今、ティラーナ教授にまとわりついていており、レザルトは僕に不利益になることをしようとしているようです」
「ティラーナ教授にまで?それで、何か弱みを掴みたいわけね」
「はい。場合によっては失脚させるかもしれません」
「ロビもワインを飲んで。チーズは自家製よ。とても美味しいわ」
ロビはワインを飲んだ。赤ワインである。何種類かあるチーズのひとつを口に運んだ。
「すごい、美味しいです」
「うちの自慢の商品よ」
シエラもチーズをつまみ、ワインを飲んだ。
「レザルトに夕食を誘われたの。あの人、女性には優しいし、話題も豊富だし、頭もいいわ。食事をしながらワインを飲み、それなりに楽しかったわよ。そして、そのお店の裏メニューという、緑色のワインが出されて飲んだの。とても美味しいワインだったわ。でも、これは誰にも教えてはいけないと言っていたわね」
(緑色のワイン?聞いたこと無いな)
「シエラ、お店の名前は?」
「王都にあるエネクスボという高級宿屋よ」
「緑色のワインはどんな味でしたか?」
「そうね、白ワインに何か別の果実が入っている感じで甘めでまったりした舌ざわりだったかしら」
(それって、もしかして……)
「その緑色のワインを飲み始めて三十分ぐらいしてから、何か性的な話をしませんでしたか?」
「そうね、そういえば、そのあたりから手を握られたり、性の手ほどき的な話をしていた気がする」
ロビは何か心当たりがあるような表情で話を続けた。
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