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「やってみた」を、やってみた

「やってみた」を、やってみた


年の瀬に思うこと


2021年もあとわずか。大人になると、月日の経つのが日増しに倍速に感じられるようになりますね。年末年始は、気持ちも新たに、何かに挑戦するにはぴったりです。来年こそは!と、やり残したことリストを眺めているあなたも、年明けを待たなくても何はともあれ「やってみる!」ことから始めてみませんか?
かく言う筆者も、やり残したことの方が圧倒的に多いですが、一つだけ、自分を褒めるべくここにしたためておこうと思います。
 

挑戦の芽ははるか昔に芽生えていた

筆者は右利きで、文字も絵も右手でしか書いたことがありません。熱々のカレーうどんを、シミ一つつけずクールにすする左利きの同僚に憧れて真似をしてみるも、一張羅を黄色い水玉模様にしただけでうどんを堪能するどころではありませんでした。しかしながら、包丁やナイフは何故か左手で使用するという特性を持っています。
その昔、仕事で急遽「野菜を刻む手元」を撮影する必要が生じたある時のこと。時間もない中、「誰でもいいから!そこのオマエ!」と投げやりな指名を受けた若き日の筆者は、緊張の面持ちでカメラの前に立ち、慣れない手つきで野菜を刻み始めました。イメージカットなので、角度や素材を変えて何テイクかを撮り終え、ディレクターの「よしOK!」の声とともに任務から解放されてほっとしていたところ、先輩からの冷静な一言。
 
「あれっ、きみ左利きなの?」
 
左利き…憧れではありますが、残念ながら違いますよ、と答えたものの、すでにモニターをチェックしているディレクターの表情が曇っています。イメージカットとは、「一般的なイメージ」を体現するものなので、多くの人が右手で包丁を使うことを考えると、左手に包丁を持って野菜を刻む場面はふさわしくないということに。
結果として「先に言え!」と筆者はこっぴどく叱られ、別なスタッフで再撮になってしまったのですが、この時にようやく「どうやら私は、包丁だけは左手で使うようだ」という事実に気づいたのでした。
 
このように、用途によって利き手が変わる人のことを「クロスドミナンス」と呼ぶそうで、なんだかカッコいい響きにちょっとだけ浮かれた気分になりましたが、いざ自分の能力を試さんと左手で文字を書いてみると、まるで手が言うことを聞きません。よく、乱筆のことを「ミミズがのたくったような字」なんて言いますが、筆者が左手で書いた文字はそれをはるかに超え、酔っ払いがクダをまいた挙句へたり込んで泥酔してしまったかのような、なんとも恥ずかしい、人に見せることを憚られる筆跡なのでした。
 
その後日常的に料理をするようになったことで、筆者の包丁やナイフの腕前は着実に向上しました。たまに人前で包丁を使う機会があると、まず間違いなく「左利きなんだね!」と言ってもらえます。しかし、何故か包丁をペンに持ち変えると全く勝手が違ってしまうのです。我ながら不思議でたまりません。
不思議ではあるものの特に必要もないので、「左手で文字を書く」ということは一切してこなかったのですが、突如思い立ちまして、

2021年の一年間、左手で文字を書くことにトライし続けた

のであります。
とは言え、前述の通り人目に触れさせるには忍びない悪筆ゆえ、正確には、自分の手帳やメモなど「自分が自分に当てて書く」ものに限定した試みではありました。もし左手で書いたこんな文字でなにがしかの書類を提出したら、「どこか具合でも悪いの?」と人から心配されてしまうに違いないレベルだったからです。
続けていけばいつの日か、左手でも右手と同様自由自在に文字が書けるに違いない、と希望をもって始めたものの、一年たった今でも「右手と同様」には遠く及びません。しかしながら、時々ドキドキしながら正式な書類も左手で書いてみたりはしています。また仕事中のメモは、ひとに見せるものではないので左手を用いることも多く、何とか自分で判読はできるので、これも続けていこうと思っています。
 
試みを始めた当初は、これほどまでに自分の思う通りに自分の体が動かせないことに驚くばかりでした。あまりの不自由さにしょっちゅうイライラしていましたが、それでも一年続けてきたこと、その結果として牛歩のごとくではありますが進歩している自分を認めてあげようと思います。
 
こんなことをして一体何になるというのでしょうか。
突然思い立って始めたことなので、筆者にもよくわかりません。
それでも、「やってみる」ことが大事なんだなあ。
来年も、もちろん続けます。

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フリーランスのモノ書きです。

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