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闘病マダム Ⅸ

闘病マダム Ⅸ



            クリスマスパーティー


時間は忘れたが患者が談話室に集まり、パーティーは始まった。看護婦さんや介護士さん、トレーナーがご自慢のかくし芸を披露してくれる。
たぶん夕方か夜。記憶はおぼろだ。
ただ数名の看護士さんが奏でたハンドベルの音は忘れられない。
クリスマス頃になると聞きたくなる。
おそらくこれからも。

私はと言えばパーティー以来皆で食事を共にする食堂に時々通うようになった。
患者さんの知り合いも少し出来て私の個室で占いもした。
そういえばトレーナーさんも占った記憶がある。
手さばきがうまくやれないのでカードの枚数を減らした簡易的な占いだが。
それでも普段と違う日常は変化があったと思う。
入院患者はおおむね楽しみが少ないから。


              介護認定


保険金が出たと前に書いたが、それには条件があった。介護2をクリアーしなければ最低の一時金だけなのだ。クリアーすれば毎年一回保険金が出るという仕組み。掛け捨てで結構高額だったので周りは貯金した方がいいのに、と言う人が多かった。
2年以上払い込み、私は悩んだ。
もし病気にならなければ死ぬまで払い続けるのだろうか?
貯金した方がいいだろうか?
それで保険レディがお客様で店にいらした時に言ったのだ。
「もうやめてもいいかな。そのぶん貯金する」
彼女は猛反対してお願いしてくる。
結局押し切られて続行することになった。
そして半年後、私は脳梗塞で倒れた。
市役所の介護認定の女性が来て判定した結果
私は介護3。
もう少し低いかと思ったが担当医から色々聞いていたのだろう。
生まれつきの脳の不具合とか。

とにかく彼女のおかげで結果オーライだ。



             大晦日 


紅白歌合戦や裏番組を見て年を無事に越す。
そのはずだった。
今夜の夕食の年越しそばをおかわりしたいなと思いながら新年に向けての個室エステをしていた。
いちおうバーのマダムだから容姿には気を使っているのだ。
真っ白なパックを塗りたくり前髪をカーラーで巻く。
テレビをかけたまま、いつのまにか私は寝入ってしまっていた。
夜の11時過ぎには異常がないか男性の介護士さんが見回りに来るのに。
その前に洗面をすます予定だった。

ノックがあり介護士さんが部屋に入ってくる。
私はその時にはじめて目を覚ます。
白面妖怪を見て『ひえっ』と短く悲鳴。

あとで彼は言った。
「デスノートかと思いましたよ」
驚かしたおわびに彼の占いは二回しました。
タロットとトランプと手相全部。


次はカテーテル手術の話をします。

                       (つづく)



        



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関西出身
東京女子大文理学部卒
ハウスマヌカン、派遣業、塾、コンパニオンなど様々な職歴
最近はバーのママをしていたが脳梗塞で倒れて閉業
現在リハビリ中
痴と知の融合、境界型の人間

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