凍結マダム　Ⅸ

　　　　　　　　　　　　　謎の男、X氏


とにかく彼の呟きは暗かった、いつもいつも。
慟哭に似た嘆きのオンパレードだ。
私の記憶に残る身につまされるようなコメがある。

「夜が明けるとまた朝が来る」
「生き地獄だ」
「Twitterでお願いなんか書かなきゃよかった、アンチに特定されて嫌がらせをされてメンタルが破壊される」

お互いなぜか相互フォローをしていたので年明け思い切って彼にコメをした。

「自分に何か力になれませんか？細々と支援活動をしています、微力ながら」

するとＤＭが返ってきた。ご自分の困窮している悲惨な状況を書いていたように思う。思う、というのは記憶しか残ってないからだ。文面は全て消えてしまった、まるで人生の終焉のようにだ。
そうして私は顔も年齢もわからない、というより会ったこともない男性と約束をかわした。自分でも信じられないバーチャルリアリティー！

貴方の危機の際に必ず尽力するから辛いツイートは終わりにしようと。

絶望の淵に生きているように思えた一人の男性に一筋の光を与えたかった。そして近く実現させようと心に決めた。今年に入ってまもない頃。
ＤＭ繋がりだったが、世間話的なやりとりは続いた。
しかしひと月もしないうちに不幸は突然やってきた。
思いがけない垢ばんだ。アカウント凍結だ。
異議申し立てを見たが言い訳は出来なかった。というよりどこにどう言えば良いのか皆目見当がつかなかった。
以前にも書いたがアカウントを共有していた衝突事故で何度も警告らしきものは目にしていた。のんきな私はその都度「あちゃ～またやってしまった！午前中はマネージャ君が投稿しているからダメだったの忘れてた」と涼しい顔で。

どれだけ能天気なのだろうか。自分でも嫌になるほど呆れてしまう。
しかし次の瞬間気づいた。
Ｘ氏と早く連絡を取らなければ。約束を守らなければ。
酔狂な人間だと自分でも本当に呆れる、凍結されてそんな場合じゃないだろうと我ながら己の心理状態を不思議に思う。
たまたまTwitterのライン繋がりの知り合いがいたからＤＭしてもらった。ツイッター凍結したからとりあえずライン交換してやり取りしたいと伝言してもらい再び無事に繋がった。


しかしこのあと予想もつかない出来事が起こる。アンチ嫌がらせが過熱して彼がTwitterを退会したのだ。私が退学いや凍結されたほぼ同時期だ。別に照らし合わせた訳ではないのに。

シンクロニシティ！
運命の歯車が重なったように感じた。
なぜなら彼が退会したあとでは再会するのは困難だったと予測するから。


　　　　　　　　　約束の成就


彼を支援する約束はあとにしないで2月に入って即守った。
内容は無粋だから内緒にする。とにかく彼は非常に助かったらしいから、幸福の王子になりたかった私はしごく満足した。
幸福の王子というより現実はダイエット中の肥腹の熟女だが。

今は彼と中学生の交換日記ならぬ中年悲哀日記を時々かわしている。
写真交換もした。イメージ通りの風貌だった。私の写真は少しばかり痩せ加工した。顔のパーツ変えたら宇宙人みたいになるから違和感なく。

次はツイッターで見た驚いたことを記載したい。
例えばエロ動画。男女の局部や本番行為まで映されている。ある女性はＡＶ女優でもあるまいに顔出しまでして。いや見たくなかったわ、ビジュアル的に耐えられなかった。
それよりも映倫にひっかからないのだろうか？
時代はかわったものだ・・・とアナログな私は呟き次回のびっくりした映像に続きます。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）