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闘病マダム Ⅵ

闘病マダム Ⅵ



              リハビリ部屋


病棟の二階奥はリハビリ室だった。窓からさんさんと日光が差し込んだ横長の部屋。
歩行練習する左右寄りかかり棒や数段の低いステップが置かれ、正方形の高さ1メートルくらいのマットに寝転びマッサージや柔軟体操をするのだ。
各自トレーナーの指示のもとに。いつも数人のトレーナーが待機していた。
電気治療器具やボール遊びもある。隅の小部屋でトランプやオセロなど様々なゲームもできる。
塗り絵そしてクレヨン、お手玉、おはじき、物語の朗読・・・

人々の様々な行動の司令塔は脳なのだ。手足は指示されて動いていることを今更ながら再認識させられる。
この部屋でいろいろな経験をした。印象に残るエピソードがある。
まずボール遊びだ。二メートルほど離れたトレーナーに向かって柔らかいゴムボールを投げる。
「自分を的にしてください」とトレーナーが言うから、彼のヘソ下あたりを狙うことにした。
だんだん命中するようになると、彼も「お婿にいけなくなる~」と騒いで楽しかった。
そしてオセロ。これは高次機能テストの一環だろうと思った。
いつもと違うトレーナーと対戦したが結果は自分の圧勝。結果を察知するや即あわててゲームの場を崩そうとする彼に私は言った。

「勝った数くらい数えましょうよ」

以来そのトレーナーは私とオセロをすることはなかった。いつも負けた患者に「次は頑張りましょうよ」と
マウントを取ってるのかなと想像したが・・・「おみそれしました」とひとこと述べて患者に花を持たせる
度量がない人の印象しか残ってない。

装具を付けてグルグル何周も歩行をしたり最後の方は簡単な調理実習もあった。
いろいろな経験をさせていただいて本当に感謝しています。



              
              高濃度酸素室


カプセルに入って横たわり濃い酸素に一時間程浸る。それが酸素治療だ。
難聴で入院した知り合いが受けて完治した話を聞いていたので効果があると信じていた。
どこの病院にもあるわけではない。たまたま設備されていたわけでラッキーだった。
人工的な森林浴を想像するが、日本の上高地に住んでいたら自然に24時間森林浴しているわけで
本当に羨ましい。

良質な水と澄んだ空気、動植物全ての生命体の健康の源なのだろう。
リーズナブルだし終の棲家にしたいとまで思っている。
できたら天然温泉の湧き出る場所が理想。
現実的にはむつかしいだろうから、せめて一週間くらい湯治に行きたい。上げ膳でお昼寝三昧で。
そういえば入院中も快適だった。
ただ、ベッド上で体を拭くだけでしばらくお風呂に入れない。だから風呂解禁の日は嬉しかった。
むろん一人では入れず看護士さんや介護士さんが付く時間制限のあるものでも。
ただ、人手が足らないのかタマに若い男性の介護士さんが監視するのだ。
それはさすがに参った。

次回はその話をします。

                         (つづく)





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関西出身
東京女子大文理学部卒
ハウスマヌカン、派遣業、塾、コンパニオンなど様々な職歴
最近はバーのママをしていたが脳梗塞で倒れて閉業
現在リハビリ中
痴と知の融合、境界型の人間

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